透明な街の解き方 第4話:まだ見えない食卓

朝になっても、食卓には二膳多い箸が残っていた。

母はそれを片づけようとして、途中で手を止めた。「これ、誰のだったかしら」

遼(りょう)は答えなかった。疑えば、透明町はまた何かを置き換える。だから今日は、疑わずに確かめる必要があった。

兄の箸には歯形がある。もう一膳は、先端がほんの少し焦げていた。火に近づけた跡。家族の誰にもそんな癖はない。

父は当然のように新聞を読み、母は当然のように父へ味噌汁を出す。自然すぎる光景ほど、遼には作り物に見えた。

固定電話が一度だけ鳴った。受話器を取ると、兄の声ではなく、食器が触れ合う音だけが聞こえた。

遼は音を録音した。疑うのではなく、残すために。

音声を再生すると、茶碗の音の奥に誰かの声が混じっていた。「いただきます」

母が顔を上げた。「今、誰か言った?」

遼は初めて、母も完全には書き換えられていないのだと知った。

透明町は記憶を消す。けれど習慣は消しきれない。空いた席、焦げた箸、食前の声。

遼は焦げた箸をポケットに入れた。3つ目を疑うのではない。3つ目が何を食べていたのかを、確かめるのだ。

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透明な街の解き方

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このシリーズの全話 10編
  1. 第1話:見えない改札
  2. 第2話:2つ目の足音
  3. 第3話:父が帰っていた夜
  4. 第4話:まだ見えない食卓
  5. 第5話:焦げた箸の持ち主
  6. 第6話:顔のない子ども
  7. 第7話:招かれた住人
  8. 第8話:3つ目ではない名前
  9. 第9話:帰れない兄の条件
  10. 最終話:見えない改札を閉じる
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この記事を書いた人

NEW MYTH編集室は、AIと共同で未来構想と物語連載をつくるための筆名です。長期連載ではシリーズごとに人物関係、伏線、未回収の謎を記録し、読者が続きを追える構成を重視しています。Future Visionsでは、AIの使い方そのものではなく、AIによって暮らしや仕事、家族、創作の選択肢がどう広がるかを扱います。

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