「監査記録として残します」
真央のメールは、その一文で終わっていた。
栗原(くりはら)は返信しなかった。森脇は返信した。「大げさにしないでください」
大げさという言葉は便利だ。被害を小さく見せ、確認を面倒に見せ、声を上げた人だけを厄介者にする。
真央は森脇の返信を保存した。
菜々は、自分で作った提出時刻のメモを添付した。震えた文字ではない。短く、正確な文章だった。
日下部から電話が来た。「栗原が動いた。過去の資料を消し始めている」
真央は言った。「消すなら、消した記録が残ります」
3年前、真央はそれを知らなかった。正しい数字だけで勝てると思っていた。
今は違う。数字だけではなく、数字を消そうとした手も記録する。
翌朝、栗原から短い返信が届いた。
「面談しましょう」
真央は画面を見て、静かに予定表を開いた。面談は、相手が逃げる部屋ではない。録音と議事録の始まりだ。
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静かな帳簿
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