嘘を売る人 第3話:紙の花を折る女

榊原志津は、紙の花を折り続けていた。

施設の窓際。白い机。折り紙の色は、赤と青だけ。真砂(まさご)が名乗っても、彼女は顔を上げなかった。

「誠一さんは、迎えに来ますか」

亡くなった夫の名前だった。

羽鳥ミカ(はとり・みか)は小さく首を振った。子どもと老人は標的にしない。それが彼女の線だ。

真砂は椅子に座った。「今日は、迎えに来る日ではありません」

嘘だった。だが、奪うための嘘ではない。志津の手が少しだけ止まり、また紙を折り始めた。

黒瀬(くろせ)の書類には、志津の同意を示す署名があった。もちろん彼女が内容を理解した署名ではない。

真砂はその署名を見て、父のことを思い出した。正直者のまま全てを失った父。守ろうとした誰かの名前。

志津は紙の花を1つ、真砂に渡した。「誠一さんに、庭がまだあると言って」

庭はもう、再開発予定地の中に入っている。

真砂はうなずいた。「言います」

ミカが外で言った。「今のは、救い?」

真砂は紙の花を見た。「救いに見える嘘だ」

その夜、黒瀬から届いた資料には、真砂の本名と、父の古い住所が並んでいた。

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嘘を売る人

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このシリーズの全話 24編
  1. 第1話:白紙の契約者
  2. 第2話:存在しない地主
  3. 第3話:紙の花を折る女
  4. 第4話:父の住所で待つ男
  5. 第5話:買い手を間違えた嘘
  6. 第6話:値段のない庭
  7. 第7話:黒瀬の寄付
  8. 第8話:悪役の領収書
  9. 第9話:嘘を買わなかった人
  10. 第10話:白紙に書かれた本名
  11. 第11話:嘘を売らない女
  12. 第12話:父が買わなかった真実
  13. 第2部第1話:未決済の買い手
  14. 第2部第2話:未来の領収書
  15. 第2部第3話:正直屋の開店日
  16. 第2部第4話:相棒を売った封筒
  17. 第2部第5話:2日目の値札
  18. 第2部第6話:値段のない上司
  19. 第2部第7話:空白の代替要員
  20. 第2部第8話:回答者の消えた面接票
  21. 第2部第9話:買われなかった署名
  22. 第2部第10話:父が断った依頼
  23. 第2部第11話:依頼人ではない代理人
  24. 第2部第12話:開店前の正直屋
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この記事を書いた人

NEW MYTH編集室は、AIと共同で未来構想と物語連載をつくるための筆名です。長期連載ではシリーズごとに人物関係、伏線、未回収の謎を記録し、読者が続きを追える構成を重視しています。Future Visionsでは、AIの使い方そのものではなく、AIによって暮らしや仕事、家族、創作の選択肢がどう広がるかを扱います。

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