嘘を売る人 第4話:父の住所で待つ男

父の住所は、もう存在しないはずだった。

区画整理で消え、地図からも消え、真砂(まさご)の記憶からも消したはずの場所。そこに、黒瀬(くろせ)の使者は立っていた。

男は名刺を出さなかった。「黒瀬は、あなたを真砂悠介とは呼ばない」

「じゃあ何と」

男は、真砂の本名を言った。

羽鳥ミカ(はとり・みか)が一歩前に出る。真砂は止めた。怒ったほうが負ける場面だ。

男は続けた。「あなたの父は、昔、榊原志津の土地を守ろうとした。正直者でした」

真砂は笑った。「正直者は褒め言葉じゃない」

「黒瀬もそう言っています」

その一言で、真砂は理解した。黒瀬は父を知っているだけではない。父が失った理由を使って、真砂を動かそうとしている。

男は紙の花を1つ置いた。志津が折ったものと同じ形。

「嘘を売るなら、買い手を間違えないことです」

真砂は紙の花を踏まなかった。拾いもしなかった。

その中間に立つことが、いま一番危険だった。

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嘘を売る人

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このシリーズの全話 24編
  1. 第1話:白紙の契約者
  2. 第2話:存在しない地主
  3. 第3話:紙の花を折る女
  4. 第4話:父の住所で待つ男
  5. 第5話:買い手を間違えた嘘
  6. 第6話:値段のない庭
  7. 第7話:黒瀬の寄付
  8. 第8話:悪役の領収書
  9. 第9話:嘘を買わなかった人
  10. 第10話:白紙に書かれた本名
  11. 第11話:嘘を売らない女
  12. 第12話:父が買わなかった真実
  13. 第2部第1話:未決済の買い手
  14. 第2部第2話:未来の領収書
  15. 第2部第3話:正直屋の開店日
  16. 第2部第4話:相棒を売った封筒
  17. 第2部第5話:2日目の値札
  18. 第2部第6話:値段のない上司
  19. 第2部第7話:空白の代替要員
  20. 第2部第8話:回答者の消えた面接票
  21. 第2部第9話:買われなかった署名
  22. 第2部第10話:父が断った依頼
  23. 第2部第11話:依頼人ではない代理人
  24. 第2部第12話:開店前の正直屋
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この記事を書いた人

NEW MYTH編集室は、AIと共同で未来構想と物語連載をつくるための筆名です。長期連載ではシリーズごとに人物関係、伏線、未回収の謎を記録し、読者が続きを追える構成を重視しています。Future Visionsでは、AIの使い方そのものではなく、AIによって暮らしや仕事、家族、創作の選択肢がどう広がるかを扱います。

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