静かな帳簿 第4話:確認済みという嘘

栗原(くりはら)は、確認済みという言葉を好んだ。

確認済み。対応済み。共有済み。3つ並べると、何もしていないことが仕事に見える。

真央は会議後、菜々に聞いた。「栗原さんから確認の連絡は来ましたか」

菜々は首を振った。「来ていません。でも議事録には確認済みって」

予想通りだった。

真央は議事録の更新履歴を開いた。作成者は森脇。最終更新者は栗原。だが、添付された入退室ログは開かれていない。

確認済みとは、見たという意味ではない。見たことにした、という意味だ。

日下部から連絡が入った。「3年前の議事録も同じ表現だ。確認済み、対応済み、共有済み」

真央は画面を閉じた。まだ過去の名前は出せない。けれど現在の嘘なら、今ここで止められる。

菜々は震えながらも言った。「私、もう謝罪文は書きません」

それだけで10分だった。真央は栗原宛に1通送る。

「確認済みの定義について、監査記録として回答をお願いします」

逃げ道は、まだ閉じない。相手が自分で扉を選ぶまで、真央は待つ。

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静かな帳簿

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このシリーズの全話 14編
  1. 第1話:謝罪文の下書き
  2. 第2話:領収書を破った人
  3. 第3話:赤字の会議室
  4. 第4話:確認済みという嘘
  5. 第5話:監査記録として残します
  6. 第6話:録音される沈黙
  7. 第7話:消された更新履歴
  8. 第8話:栗原の署名
  9. 第9話:数字は空気を読まない
  10. 第10話:守られた証言者
  11. 第11話:退職者の社員番号
  12. 第12話:入社前の承認
  13. 第13話:2人目の告発者
  14. 最終話:静かな決算説明会
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この記事を書いた人

NEW MYTH編集室は、AIと共同で未来構想と物語連載をつくるための筆名です。長期連載ではシリーズごとに人物関係、伏線、未回収の謎を記録し、読者が続きを追える構成を重視しています。Future Visionsでは、AIの使い方そのものではなく、AIによって暮らしや仕事、家族、創作の選択肢がどう広がるかを扱います。

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