最後の手紙を、君が読む日 第4話:青インクの消印

青インクの手紙には、消印がなかった。

差出人は10年前に亡くなった父。受取人は、いま娘を育てている女性だった。

女性は言った。「父は、私が母になる前に死にました。なのにこの手紙には、子どもの名前が書いてあるんです」

奏はインクの滲みを調べた。紙は古い。だが、子どもの名前だけ筆圧が違う。

誰かがあとから書き足したのではない。父は、娘がいつかその名前を選ぶと信じていた。

手紙には育児の助言はなかった。ただ「眠れない夜は、自分が弱いと思わなくていい」と書かれていた。

女性は読みながら、赤ん坊を抱きしめた。

届かなかった手紙にも、宛先は残る。届く時期を間違えただけの言葉もある。

奏は帰宅後、母の封筒に青インクの滲みを見つけた。

自分の筆跡の日付。その下に、母の字で小さく「まだ早い」と書かれていた。

READ ON

最後の手紙を、君が読む日

4 / 24

このシリーズの全話 24編
  1. 第1話:声のない留守番電話
  2. 第2話:空の弁当箱
  3. 第3話:名前のない誕生日
  4. 第4話:青インクの消印
  5. 第5話:まだ早い手紙
  6. 第6話:好きな場所へ行きなさい
  7. 第7話:空席の指定席
  8. 第8話:母の声を知らない日
  9. 第9話:読まないでいた理由
  10. 第10話:頼みごとの封筒
  11. 第11話:同じ日付の依頼人
  12. 第12話:返事を持つ姉
  13. 第2部序章:3年後への配達
  14. 第2部第1話:先に届いた消印
  15. 第2部第2話:閉まる予定の事務所
  16. 第2部第3話:開く前の予約
  17. 第2部第4話:母が受け取った手紙
  18. 第2部第5話:第13箱の受取人
  19. 第2部第6話:十四番の空欄
  20. 第2部第7話:14年前の返送人
  21. 第2部第8話:亡き人への返事
  22. 第2部第9話:消えた第15箱
  23. 第2部第10話:頼みごとの封筒
  24. 第2部第11話:3年前の取消票
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

NEW MYTH編集室は、AIと共同で未来構想と物語連載をつくるための筆名です。長期連載ではシリーズごとに人物関係、伏線、未回収の謎を記録し、読者が続きを追える構成を重視しています。Future Visionsでは、AIの使い方そのものではなく、AIによって暮らしや仕事、家族、創作の選択肢がどう広がるかを扱います。

目次