午後3時の旧写真部室は、廃部してから5年たった匂いがした。湿った段ボール、酢酸の抜けないフィルムケース、誰かが最後に飲んだまま忘れた紙コップ。灯里(あかり)が未投函の招待状を鍵穴へ近づけると、封筒の裏に貼られた小さな金属片が鍵の代わりになった。
「私たち、ここへ来たことがある」律が言った。断言ではなく、自分に確認する声だった。壁には集合写真の額が12枚あるのに、3年前の1枚だけ外されていた。周は埃の切れ目を指でなぞり、「持ち去ったのは最近です」と言った。
言葉にしたことで状況は少しだけ動き、同時に次に確かめるべき点も見えた。
その場で結論を急がず、誰が何を選べるのかを1つずつ確かめた。
大切なのは正しい役を演じることではなく、相手の選択を相手へ返すことだった。
私は招待状の筆跡を見た。5人目へ、と書いたのは私だ。だが思い出せない。灯里は私の隣に立ち、「思い出せないことを、誰かに奪われたことにしなくていい」と言った。慰めではなかった。私自身が忘れることを選んだ可能性も、同じ重さで置く言葉だった。
見落としていた小さな事実が、これまでの説明を別の角度から照らした。
暗室の机には4冊の作業日誌があった。撮影者、現像担当、受取人、立会人。水曜日の海で撮った写真の日、撮影者は私、立会人は灯里、受取人は律。現像担当の欄だけ修正液で消されていた。周が紙を斜めから照らすと、筆圧で「真琴」と読めた。
その場で結論を急がず、誰が何を選べるのかを1つずつ確かめた。
言葉にしたことで状況は少しだけ動き、同時に次に確かめるべき点も見えた。
言葉にしたことで状況は少しだけ動き、同時に次に確かめるべき点も見えた。
消された名前
大切なのは正しい役を演じることではなく、相手の選択を相手へ返すことだった。
真琴という名を口にした瞬間、4人の反応は違った。律は窓へ顔を向け、周は無意識に左手首をつかみ、灯里は「知ってる」と言ってから口を覆った。私は何も思い出せなかったが、名前を知らない悲しみだけが先に胸へ来た。
見落としていた小さな事実が、これまでの説明を別の角度から照らした。
大切なのは正しい役を演じることではなく、相手の選択を相手へ返すことだった。
その場で結論を急がず、誰が何を選べるのかを1つずつ確かめた。
部室のロッカーに、真琴宛ての退部届が残っていた。理由は「関係の記録係をやめる」。彼女は恋人ではない。4人が互いに言えなかったことを写真と音声で預かり、誰かが嘘をついたときだけ返す役を、自分から引き受けていた。
言葉にしたことで状況は少しだけ動き、同時に次に確かめるべき点も見えた。
「そんな役、頼んだの?」灯里が聞いた。律は首を振った。周は長く黙り、「僕が最初に相談した」と認めた。灯里を好きなのか、守りたいだけなのか、自分でも分からなかった頃だという。真琴は答えを与えず、4人で話す日を決めた。それが水曜日の海だった。
大切なのは正しい役を演じることではなく、相手の選択を相手へ返すことだった。
見落としていた小さな事実が、これまでの説明を別の角度から照らした。
見落としていた小さな事実が、これまでの説明を別の角度から照らした。
私は作業日誌の間から、小さな同意書を見つけた。そこには私の署名で「この夜の写真を、私が頼むまで見せないでください」とある。記憶を消す装置などなかった。私は写真を見ないこと、話題を避けること、灯里たちにも触れないでほしいと頼むことで、思い出せない状態を自分で作ったのだ。
その場で結論を急がず、誰が何を選べるのかを1つずつ確かめた。
「どうして」と律が聞いた。責めてはいなかった。だからこそ逃げられなかった。「あなたと別れた理由を、あなたの気持ちのせいにしたかったから」私は言った。本当は仕事を辞め、知らない町へ行きたいと思っていた。律と未来を決めることが怖くなり、灯里への嫉妬を理由にすれば、自分の選択を説明しなくて済んだ。
言葉にしたことで状況は少しだけ動き、同時に次に確かめるべき点も見えた。
その場で結論を急がず、誰が何を選べるのかを1つずつ確かめた。
大切なのは正しい役を演じることではなく、相手の選択を相手へ返すことだった。
灯里は泣かなかった。「私、あなたを傷つけた側だと思ってた。だから結婚式で全部直せるつもりだった」周も、「僕は守る側だと思っていた」と言った。4人とも、自分に都合のいい役を選び、真琴に記録の重さを預けた。
見落としていた小さな事実が、これまでの説明を別の角度から照らした。
預けたものを受け取る
その場で結論を急がず、誰が何を選べるのかを1つずつ確かめた。
言葉にしたことで状況は少しだけ動き、同時に次に確かめるべき点も見えた。
言葉にしたことで状況は少しだけ動き、同時に次に確かめるべき点も見えた。
暗室の奥で古い音声レコーダーが見つかった。電池を替えると、水曜日の海の雑音が流れた。グラスの音、店員の笑い声、私たちの途切れた会話。真琴の声は落ち着いていた。「今夜決めるのは、誰が誰を好きかではない。誰の選択を、誰が代わりに決めているかです」
大切なのは正しい役を演じることではなく、相手の選択を相手へ返すことだった。
録音の中で私は、別れたいのではなく、一度ひとりで暮らしたいと話していた。律は待つと言い、私は待たれることまで負担だと怒った。灯里は仲裁し、周は灯里を外へ連れ出そうとした。全員が善意で、全員が少しずつ私の言葉を別の意味へ変えていた。
見落としていた小さな事実が、これまでの説明を別の角度から照らした。
大切なのは正しい役を演じることではなく、相手の選択を相手へ返すことだった。
その場で結論を急がず、誰が何を選べるのかを1つずつ確かめた。
録音を止めたのは私だった。「この続きは、今の私には持てない」と言い、真琴に預けた。真琴は期限を尋ね、私は「誰かが結婚するとき」と答えていた。灯里の式は、過去を暴く罠ではなく、私が自分で決めた返却日だった。
言葉にしたことで状況は少しだけ動き、同時に次に確かめるべき点も見えた。
律が「待つとはもう言わない」と言った。「でも、いま君が話したことは聞いた。聞いたことを、なかったことにはしない」私はうなずいた。それは復縁の約束ではない。ようやく相手の選択を相手へ返す言葉だった。
大切なのは正しい役を演じることではなく、相手の選択を相手へ返すことだった。
見落としていた小さな事実が、これまでの説明を別の角度から照らした。
見落としていた小さな事実が、これまでの説明を別の角度から照らした。
灯里は延期した式の招待状を4つに破らず、日付だけ二重線で消した。「次の日付は、私と周だけで決めない。式をするかどうかから考える」周は寂しそうに笑い、それでも「そうしよう」と答えた。
その場で結論を急がず、誰が何を選べるのかを1つずつ確かめた。
ロッカーの底には真琴の連絡先があった。電話は使われていなかったが、封筒にQRコードが印刷されていた。開くと1件の音声が再生された。収録日は昨日。真琴は生きていて、私たちがここへ来ることを知っていた。
言葉にしたことで状況は少しだけ動き、同時に次に確かめるべき点も見えた。
その場で結論を急がず、誰が何を選べるのかを1つずつ確かめた。
「記録を返します。もう私を5人目と呼ばないでください」真琴の声の後ろで、電車の発車ベルが鳴った。「それから灯里へ。4人目はあなたではない。あの夜、四人目の恋人と呼ばれたのは——」
そこで音声は切れた。続きのファイルには、明日の到着時刻だけが表示されていた。
四人目の恋人
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