透明な街の解き方 第5話:焦げた箸の持ち主

焦げた箸は、熱を持っていた。

昨夜から一晩経ったのに、先端だけが微かに温かい。遼(りょう)はそれをハンカチで包み、兄の部屋へ向かった。

兄の部屋は、物置になっていた。家族が兄を忘れかけている証拠だ。

押し入れの奥に、小さなコンロがあった。キャンプ用の古い道具。兄が一度も使わせてくれなかったものだ。

その箱に、焦げた箸と同じ匂いが残っていた。

遼は疑わない。確かめる。コンロの写真を撮り、台所の母に見せた。

母は写真を見て、目を細めた。「これ、伊月(いつき)が誕生日に欲しがったやつ」

名前が戻った。

一瞬だけだった。母はすぐに「誰だっけ」とつぶやいた。けれど遼は録音していた。

焦げた箸の持ち主は兄ではない。兄と一緒に火を囲んだ誰かだ。

透明町の住人は、家族の外から来たのではない。家族が語らなかった場所に、最初から座っていた。

その夜、兄から1枚の写真が届いた。焚き火の前に、遼、伊月、そして顔のない子どもが写っていた。

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透明な街の解き方

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このシリーズの全話 10編
  1. 第1話:見えない改札
  2. 第2話:2つ目の足音
  3. 第3話:父が帰っていた夜
  4. 第4話:まだ見えない食卓
  5. 第5話:焦げた箸の持ち主
  6. 第6話:顔のない子ども
  7. 第7話:招かれた住人
  8. 第8話:3つ目ではない名前
  9. 第9話:帰れない兄の条件
  10. 最終話:見えない改札を閉じる
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この記事を書いた人

NEW MYTH編集室は、AIと共同で未来構想と物語連載をつくるための筆名です。長期連載ではシリーズごとに人物関係、伏線、未回収の謎を記録し、読者が続きを追える構成を重視しています。Future Visionsでは、AIの使い方そのものではなく、AIによって暮らしや仕事、家族、創作の選択肢がどう広がるかを扱います。

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